土曜日の朝。ベッドの中でスマホを握りしめ、冷や汗を流しながら昨夜の未読LINE(マイさんからのTDLデートの誘い)に返信を打った。
なんとか角を立てずに先延ばしにしようと、必死の言い訳を練り上げる。
『返信遅くなってごめん! 仕事が立て込んでて連絡見落としてました。今週末は午前中外せない用事があって、ディズニーはまた今度落ち着いた時にでも……』
送信ボタンを押してホッとしたのも束の間、わずか10秒で返信が飛んできた。
『えっ全然大丈夫です! 私もうチケット取っちゃいましたし! 鈴木さんの都合に全部合わせるので、明日日曜日、何時でもいいので行きましょ〜!✨』
詰んだ。
逃げ場が完全に塞がれた。24歳女子の圧倒的な推しに押され、あれよあれよという間に明日の「日曜TDLデート」が確定してしまった。
しかも、あの日彼女は言っていたのだ。『車出せたりしますか?🚗』と。
42歳独身、池袋ワンルーム暮らし。普段の移動は100%山手線で、車なんて持っているはずもない。
だが今さら「電車で行こう」と言って大人の見栄を崩すのも情けない。パニックに陥った俺は、恵比寿の実家の親父に電話をかけた。
「親父、頼む! 明日一日だけ車を貸してくれ!」
そうして確保したのが、恵比寿の実家のガレージに鎮座する親父の愛車、20年落ちのBMW 750iだ。
色は美しいホワイト。完全屋内ガレージ保管で、雨の日は一切走らせない親父の偏愛的な手入れのおかげで、ボディは驚くほどピッカピカ。20年落ちとは到底思えない、まるでショールームから納車されたばかりの新車そのものの輝きを放っている。
だが、全長5メートルを超えるV8エンジン搭載の大型高級セダンである。20代女子を横に乗せてディズニーランドへ向かうには、あまりにも威圧感と重厚感がありすぎる。
(しかも車内には、上質なレザーシートの匂いとともに親父特有のハッカ飴の香りが微かに漂っている)
普段山手線ばかりのペーパードライバーな俺が、明日このピカピカの白い巨艦を無傷で舞浜まで走らせられるのか……途中で擦らないことだけを祈るしかない。
続いてクローゼットを開けて絶叫した。
スーツと色褪せたロックTシャツとヨレヨレのスウェットしかない。42歳が20代女子とディズニーに行く服が1着も存在しないのだ。
慌てて池袋の無印良品へダッシュ。痛い若作りにならないよう、店員さんに聞く勇気もないまま、無難を極めた綺麗めのオックスフォードシャツと清潔感のあるチノパンを速攻で購入した。
合コンの隅っこでウーロンハイをすすっていた哀れな地縛霊はどこへ行ったのか。今の俺は、リアルな彼女ゲットという現世の夢にしがみつき、必死に爪を立てて百烈肉球を繰り出す『地縛ニャン』そのものだ。
夜。部屋に戻り、蘇った65インチ有機ELとPS5 Proの排熱ファンを軽く点検。
自作エアフローは完璧、マイナス7度の冷却テストも無事にクリアし、AKRACINGのチェアでプレミアムモルツをプシュッと開けた。
俺の城(GTA6要塞)は完璧に仕上がった。
だが今夜はゲームどころではない。新車同然の白い750iの首都高ルートを確認し、無印のシャツにアイロンをかけ、明日の急襲デートに備えなければならんのだ……!
嵐の前の静けさ。明日、夢の国へスクランブル発進。あと26日。
奪えるお金やアイテムの量は、持っているダッフルバッグの容量に依存するシステム。欲張りすぎて逃げ遅れないよう注意が必要ですな。(関連キーワード:ルートバッグ / ダッフルバッグ / 持ち物制限 / 強盗)