月曜日の朝。
土曜の夜に割ってしまった65インチ有機ELの悪夢から一睡もできず、重い足取りで渋谷のオフィスへ向かった。
調べたところ、ゴールドポイントカード・プラスの事故受付デスクの受付時間は9時30分から。
だが、月曜朝のIT企業は戦場だ。出社早々に障害メールの確認や週初めのタスク整理に追われ、自席で私用の電話をかけられるような空気では到底なかった。
10時の開発課の朝礼。
「もし保険の対象外と言われたら、自腹で30万円コース確定か……?」という恐怖が頭を支配し、俺は完全に心神喪失の状態でホワイトボードの前に立っていた。
「……えー、今週のスプリント課題ですが……あの……サーバーの負荷テストが……」
声が上ずり、ろれつが回らない。
部下の小林(エース)が怪訝な顔でこちらを見る。
「課長……大丈夫ですか? 顔色が完全に土気色ですけど、熱でもありますか?」
隣の岩本も「課長、無理しないでください! もしかして体調不良ですか!?」と本気で心配してくる。
そこへ総務の佐藤さん(安らぎ担当)が書類を届けに来て、「鈴木課長、お疲れ様です」とおっとりした笑顔でにっこり微笑んでくれた。
そのいつも通りの温かい笑顔が、やましい嘘と不安でドロドロの俺の胸にチクチクと刺さる。
「あ、ああ……ありがとう佐藤さん……」
適当な返事をしながら胃がキリキリと悲鳴を上げた。
誰も知らない。この課長がいま、38万円の有機ガラスのヒビと30万円の損害賠償リスクに怯えているだけだということを。
太田胃散を2包一気に水で流し込んだ。
そして待ちに待った12時、昼休み。
俺は財布からゴールドポイントカード・プラスを抜き取り、逃げるようにオフィスを飛び出した。
宮下パークの隅、人通りの少ないベンチに駆け込み、震える指で事故受付デスクにダイヤルした。
窓口の担当者に、配線作業中に物をぶつけて液晶を破損させてしまった状況を正直に説明した。
担当者からは、破損状況の写真と購入時のレシート(カード利用控え)をWEBフォームから送信してほしいこと、そして引受保険会社(東京海上日動)による審査に入る旨を案内された。
審査……! 否決されたら即座に30万円自腹確定の死刑宣告だ。
ベンチの上でスマホを操作し、昨夜撮影したヒビ割れ写真と利用控えをWEBフォームから必死にアップロードした。
結果が出るまで数営業日。俺の胃が保つのか、それともレオニダの夢が潰えるのか。
コンビニのサンドイッチの味がまったくしない月曜の昼下がり。あと45日。
初公開されたトレイラーは、24時間で9000万回以上再生され、YouTubeの非音楽ビデオとしてのギネス記録を樹立。世界中の熱狂ぶりが伺えます。(関連キーワード:トレイラー / 再生回数 / ギネス記録 / YouTube)