昨夜は小林を渋谷の高架下に連れ出して終電間際まで飲んでしまい、ブログの更新が翌朝になってしまった。
今、出社前に渋谷のドトールでアイスコーヒーを胃に流し込みながら、スマホで昨夜のことを急いでまとめている。
昨夜の出来事——。赤提灯が揺れ、焼き鳥の煙が立ち込める中、ホッピーのセットを頼んで小林のグラスに注いだ。
「小林。昼間の話だがな……」
「課長、引き留めても無駄です。僕の決意は固いです」
頑なな小林。その情熱、ゲーマーとしての狂気は、痛いほど理解できる。
何しろ目の前で偉そうに説教しようとしているこの課長自身、150万の結婚資金を溶かして65インチ有機ELとPS5 Proを買い揃え、会社に嘘をついて「マイアミ旅行」を偽装している張本人なのだから。
だが、上司として、そして五反田の泥沼営業を15年生き延びてきた先輩として、ここで若手の将来を棒に振らせるわけにはいかない。
俺はホッピーを一気に煽り、身を乗り出した。
「小林、よく聞け。
定職を捨てて無職でプレイするGTAが、本当に最高だと思うか?
朝起きてゲームを起動する時、通帳の残高が減っていく恐怖、社会復帰できるかどうかの不安が頭をよぎるぞ。
GTAの真の美味さはな——『理不尽な社会でクタクタになるまで働いた後、強固な身分と給与というセーフティネットを背負いながら、合法的に悪事に手を染める背徳感』にあるんだよ!」
小林がハッとしたように目を見開いた。
「逃げ場の狂気じゃない。帰る場所があるからこそ、バーチャルの犯罪都市は最高に輝くんだ。
お前のキャリアに傷をつけるな。GTAのために無職になるんじゃない。GTAを最高に美味く味わうために、会社を利用しろ!」
五反田仕込みの泥臭い弁舌が、小林の心に突き刺さっていくのが分かった。
小林の瞳に揺らぎが見えた。あと一押しだ。あと36日。
車両のナンバープレートや服装が記憶され、着替えたり車を乗り換えないと手配度が下がりにくくなるという噂。よりリアルな逃走劇が求められます。(関連キーワード:指名手配 / ナンバープレート / 着替え / 手配システム)